「定年後、ポイントカードが増えるほど“脳”が老ける?」――誰も語らない老後の小さな落とし穴

五月の終わりになると、朝の空気が少しだけ湿り気を帯びてきます。
スーパーへ向かう道端には紫陽花のつぼみがふくらみ始め、早朝の公園ではラジオ体操の音が聞こえてきます。こんな季節になると、「歳を取るのも悪くないな」と思う瞬間があります。
しかしその一方で、60代になると妙に増えていくものがあります。
それは、財布の中の「ポイントカード」です。
ドラッグストア、スーパー、ホームセンター、ガソリンスタンド、病院の診察券、シニア会員カード……。気づけば財布がパンパンになり、「あれ、どこに入れたかな」とレジ前で慌てることも増えてきます。
実は最近、この“ポイントカード問題”が、老後の脳疲労や判断力低下に深く関係しているという話題を見かけるようになりました。
資産形成でもNISAでもなく、「ポイントカードと脳の老化」。
おそらく、60代男性ブロガーでこのテーマを書く人はかなり少ないでしょう。
ですが私は、この小さな問題こそ、老後の幸福感に大きく関わっている気がするのです。
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60代になると、若い頃よりも「損をしたくない」という気持ちが強くなります。
年金生活が見えてきますし、退職金を切り崩しながら生活している方も多いでしょう。
だからこそ、100円でも安く、1ポイントでも多く貯めたいと思うのは自然なことです。
私も以前はそうでした。
スーパーは火曜市。
ドラッグストアは5%オフの日。
ガソリンは会員デー。
電子マネーのキャンペーンも確認。
さらにスマホアプリのクーポンも見る。
若い頃なら楽しめたのですが、60代になるとこれが妙に疲れるのです。
ある日、レジ前で店員さんにこう言われました。
「こちらのアプリクーポン、本日までです」
私は慌ててスマホを開きましたが、老眼で画面が見えません。
パスワードも思い出せず、後ろには長蛇の列。
結局クーポンは使えず、妙に落ち込みました。
たった数十円の話です。
ですが、その日一日、「自分はダメになったな」と引きずってしまいました。
老後のお金の問題というのは、実は“金額”だけではありません。
「判断する回数」が増えること自体が、脳に負担をかけるのです。
最近は、NISAや配当投資でも同じことを感じます。
情報が多すぎるのです。
YouTubeを開けば「この銘柄が危険」「今すぐ売れ」「配当金生活」など刺激的な言葉ばかり。
見れば見るほど、不安になります。
昔の人はよく言いました。
「老後は、頭をシンプルにして暮らせ」
私は最近、その意味がようやく分かってきました。
財布の中がパンパンな人ほど、なぜか家の中も散らかっている
不思議なことですが、財布の中が整理できていない時期は、部屋も散らかっていました。
郵便物は山積み。
使わないケーブル。
いつか読む新聞の切り抜き。
期限切れの割引券。
特に退職後は、「まだ使える」が増えるのです。
現役時代は忙しく、捨てる判断を勢いでできました。
しかし老後は時間がある分、「もったいない」が強くなる。
これが意外と脳を疲れさせます。
最近の研究では、“選択肢が多いほど人は疲労する”と言われています。
つまり、
・どの店が安いか
・どのポイントを使うか
・どの投資信託にするか
・どの保険を残すか
こうした小さな判断の積み重ねが、60代の脳に静かにダメージを与えるのです。
私の友人に、退職金3000万円を持っている男性がいます。
しかし彼は毎日、スーパー3軒を自転車で回ります。
理由は、「卵が10円安いから」。
ある日、彼が転倒して足を骨折しました。
治療費と通院費で、節約した金額など簡単に吹き飛びました。
私はその時、「老後のお金とは、残高だけではない」と感じたのです。
健康もまた、資産なのです。
五月の終わり、蒸し暑い夕方にコンビニへ行くと、高齢男性がアイスを片手に雑誌コーナーで立ち読みしています。
その姿を見ると、私は少し安心します。
老後とは、本来もっとのんびりしたものだったはずです。
株歴50年超のプロが今、買うべきと考える銘柄最後に私が全部のポイントカードを捨てた理由
ここからが、読者の方に驚かれる話かもしれません。
私は先月、財布の中のポイントカードをほとんど捨てました。
診察券以外、ほぼ処分したのです。
最初は怖かったです。
「損するのではないか」
「老後資金が減るのではないか」
そんな不安がありました。
ですが、不思議なことが起きました。
お金の不安が減ったのです。
財布が軽くなると、頭も軽くなりました。
レジ前で慌てない。
アプリを探さない。
パスワードを思い出そうとしない。
すると、無駄遣いまで減ったのです。
人は「得しよう」と考えすぎると、逆に余計な物を買うようになります。
ポイント5倍だから買う。
限定クーポンだから買う。
しかし本当に必要だったかと言われると、怪しいものばかりでした。
さらに驚いたのは、投資にも変化が出たことです。
以前は毎日株価を見ていました。
ですが今は、高配当ETFを少し持つだけ。
すると、血圧まで安定してきました。
ここで、多くの読者はこう思うでしょう。
「つまり、節約をやめろという話か」
違うのです。
実は私は最近、“ある場所”に一番お金を使っています。
それは喫茶店です。
毎朝、古い喫茶店でホットコーヒーを飲みます。
窓際には初夏の風。
新聞を読む高齢男性。
静かなジャズ。
そして私は、そこで何もしません。
投資情報も見ません。
ポイントも貯めません。
ただ、ぼんやりしています。
すると不思議なことに、「まだ人生は悪くないな」と思えるのです。
老後資金というのは、通帳の数字だけではありません。
心の余白もまた、老後資産なのだと思います。
60代になると、人は「増やす」ことばかり考えます。
ですが本当に必要なのは、「減らす勇気」なのかもしれません。
カードを減らす。
情報を減らす。
不安を減らす。
そうすると最後に残るのは、お金ではなく、“穏やかな時間”なのです。
そして私は最近、その穏やかな時間こそが、若い頃には気づけなかった最高の贅沢だったのではないかと思い始めています。


